東京高等裁判所 昭和52年(行ケ)206号 判決
一 請求の原因一ないし三の各事実については当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の取消事由の有無について検討する。
成立につき争いのない甲第三号証(補正された本願明細書)によれば、本願発明においては、遮断壁によつて区画される高圧室と低圧室は確実に遮断され、高圧室は密閉された状態にあり、高圧室にピストンによつて圧油が供給され、その圧力の増大に応じて圧力調整弁が弁孔内に後退して高圧室内の油量が漸次増加してくるが、高圧室は依然として密閉室として構成されていることが認められるところ、右高圧室内にはパスカルの原理によつて高圧の油圧が均等にかかり、各隔壁の両壁面に作用する圧力は、隔壁の形や数、相互の位置関係いかんにかかわらず、その大きさが等しく、しかもその方向が両壁面につき反対であるので互に釣合い状態となつて回転輪に回転力を及ぼすことにはならず、その油圧は、回転輪に対する回転力として作用することにならない。したがつて、回転輪が一定方向にのみ抵抗なしに回転するよう設けられていても、このことによつて前叙の釣合い状態が破られ、回転輪が回転を開始することにならないことも明らかであり、この点における原告の主張を採用することはできない。
原告は、本願装置の実験試作品の写真であるとして、甲第八号証の一、二を提出し、これらが原告主張のごとき写真であることは争いがないが、これら写真も右の判断になんら影響はない。
また、当審における原告の主張に沿つて前記本願明細書を精査するも、本願発明において回転輪が回転を開始するための回転力を発生させるような構成を見い出すことはできない。
したがつて、審決が本願の発明は回転輪が回転を開始するという作用を奏するものではなく所期の目的を達成することができるものとは認められないとの理由で、特許法第二九条第一項柱書に規定する発明とは認めることができないとした判断は正当であつて、審決には、何ら違法はない。
三 よつて、審決に違法があることを理由にその取消を求める原告の本訴請求は理由がないから棄却することとする。